11月29日(金曜日)に第44回NMS金曜会を開催いたします。
今回は、
埼玉医科大学 医学部 生化学 講師
中野 貴成先生に
『小腸を介したコレステロール逆輸送系の動脈硬化の進展抑制への期待』
についてご講演いただきます。
日時:11月29日(金)18:30開始
場所:大学院棟B2F演習室3
小腸は単に受動的な脂質吸収を行う臓器ではなく、肝臓とともにコレステロール(Chol)を排出する臓器でもあります(Trans-Intestinal Cholesterol Efflux, TICE)。
Niemann-Pick C1-like 1 (NPC1L1)は小腸Chol吸収の責任タンパク質です。興味深いことに、NPC1L1阻害は腸管を介したコレステロール逆輸送(TICE)を促進することがその後明らかとなりました。2014年、NPC1L1の不活性型変異は顕著な血漿Chol低下がなくとも心疾患イベントが半減することがわかりました(NEJM 2014)。この知見は早期からのTICE促進が大きなイベント抑制につながる可能性を示しました。
演者は腸管からのChol排出TICEの機序解明について報告し(1)、これまで報告された腸管におけるChol収支データとも矛盾しないことを示しました(2)。さらに食品成分である植物ステロールのChol吸収阻害も、植物ステロールによるTICE刺激に起因することを指摘しました(3)。植物ステロールは容易に摂取できる食品成分で、若年からの血管ケアの新たな手段になるかも知れません。
本発表ではあまり知られていない小腸の意外な働きと、その機序とともに将来への期待も含めて紹介したいと思います。